Book shelf: Ptolomeo by minottiitalia



Ptolomeo という本棚をご存知だろうか。

Bruno Rainaldi がデザインを手がけ minottiitalia が販売を行っているもので、2002年に発表され、2004年には Compasso d'Oro 金賞を受賞している。


この本棚は見てのとおり書籍を平積みに収納する構造になっている。普通、本棚といえば書籍を立てて収納するものがほとんどだ。それが収納空間として最も効率的で書籍を痛めず、検索や出し入れを容易にするからだ。だから書籍を平積みにするという行為は無粋で無頓着で無礼なものとされている。

ところがこの本棚はそれを見事に逆手にとって、どこまでも地面に垂直に、書籍を高く平積みすることができるようデザインされている。考えてみれば知識としての書籍を積み上げるという構造は実に象徴的だし、モダンでありながらそのプロポーションは実にエレガントである。収納力も申し分ない。しかもウィットにも富んでいるのだから始末に負えない。この本棚は地面から垂直に起立するフレームにコの字型のユニットが取り付けられ、そこに書籍を収納する仕組みになっているのだが、よく観るとそのユニットの角度が左右に少しづつズレるようにデザインされている。書籍を収納した際に適度なバラツキが生まれ、その無造作なかたちを楽しむように工夫されているのだ。まさに既存の価値を組み替えるといった発想の転回がかたちとなった例と言えるだろう。しかも実現するには相当の試行錯誤を行ったはずだ。まさに Bruno Rainaldi の天才をそこに見る思いがする。


デザインを評価する際、私はそこに視点があるかどうかを重視する。つまりデザイナーが発見した視点の転回がきちんとかたちにされているかどうかということを。そしてそれは科学であれ、哲学であれ、世のクリエイション全てに共通するものだ。


先日、ようやくこの本棚が家に届いた。

初めて出会ったのは2006年の Milano salone だったか、そこで展示されているのをみて一目惚れ。以来ずっと気になっていた。日本に帰国した際、これまで使ってきたユニット・シェルフが壁に立て掛けるタイプだったのが災いして新居に設置できず、代わりにこの Ptolomeo を思い切って購入したのだ。運送してくれた配達員がこれを組み立てた後、不思議そうに眺めながら「これは何に使うものなんですか?」と訊く。なるほど、まさかこれが本棚だとは思わなかったらしい。そういう意外性がこのプロダクトの醍醐味なのだろう。(urikura)